腰痛ストレッチと予防法
腰痛緩和ストレッチと予防法
在宅勤務が続き、腰の痛みにお困りではありませんか?ひとことに腰痛といっても、その原因はさまざまです。ここでは腰痛の種類と原因や、専門家監修の腰痛緩和につながるストレッチ、そして日常生活で心がけたい予防と対策を解説します。
腰痛の種類と原因
腰痛とは特定の病気・疾患の名称ではなく、腰に感じる痛み、はりといった不快感などの「症状」を示す総称で、特異的腰痛と非特異的腰痛の2つに大きく分かれます。それぞれの代表的な疾患、原因などをご紹介します。
特異的腰痛
腰痛が生じる背景には、病気・疾患だけでなく、さまざまな原因が隠れています。医師は、診察とX線やMRIなどの画像検査によって診断をします。原因が特定できるものは「特異的腰痛」と呼ばれます。特異的腰痛の原因となる代表的な疾患には、以下のようなものがあります。
■腰椎椎間板ヘルニア
脊柱の下部を構成する腰部は、5つの椎体が重なって形成されています。椎体の間には、クッションの役割を担う椎間板(ついかんばん)が存在し、椎間板の中心にはゼリー状の髄核があります。この髄核の一部がはみ出したり、はみ出そうとして神経を圧迫し、痛みなどを生じさせるのが、「腰椎椎間板ヘルニア」です。痛みのほか、下肢にしびれが出たり、足に力が入りにくくなったり、歩き方にも影響がでることがあります。
■腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)
脊柱は、中に脊柱管というパイプがあり、脊柱管を通っている脊髄から手・足の先端まで神経が伸びています。神経の通り道である脊柱管が加齢などによる骨の変形で狭くなり、神経が圧迫されることで発症する疾患です。安静にしていればほとんど症状はありませんが、立ったり歩いたりすると足にしびれや痛みが生じて長く歩くことができなくなります。少し休むとしびれや痛みは軽減されますが、歩き出すとまた症状が現れるのが特徴です。
非特異的腰痛
腰痛には特異的腰痛のように原因が特定できるものよりも、特定できないもののほうが圧倒的に多い傾向があります。このように、原因の特定ができない腰痛は「非特異的腰痛」と呼ばれます。一般的に腰痛というと、この非特異的腰痛を指すことがほとんどです。非特異的腰痛に分類されるものの一例をご紹介します。
■ぎっくり腰
「ぎっくり腰」は、急に生じる強い腰の痛みの総称で、特定の病名ではありません。何かを持ち上げようとしたり、腰をねじるなどの動作をしたりした場合に起こることが多いといわれますが、とくにきっかけがないケースもあります。原因も、腰椎の捻挫や椎間板の損傷、腰を支える筋肉や腱、靱帯の損傷など、さまざまです。
■筋・筋膜性腰痛症
突発的かつ急激な強い力が腰にかかることで、筋肉や靱帯といった腰の筋肉組織が損傷して生じる腰痛が「筋・筋膜性腰痛症」です。持ち上げるものが予想以上に重かったり軽かったり、重いものを運んでいる最中に転倒したりした場合に生じやすいといわれています。
■慢性腰痛
3ヵ月以上継続した腰の痛みがあると、「慢性腰痛」に分類されます。慢性化した腰痛は、急性の腰痛に比べて症状が自然に改善しにくい傾向にあります。慢性腰痛には運動療法が有効といわれていますが、ほかに鍼治療やマッサージ、ヨガなども短期的であれば一定の改善効果を示すことがわかっています。
腰痛緩和のストレッチ
腰痛をやわらげるには、安静を続けるよりも積極的に動いたほうがよいといわれています。ストレッチもそのひとつ。腰痛緩和におすすめのストレッチをご紹介します。
ストレッチをするときは、呼吸をとめないように、ゆっくりと大きく呼吸をしましょう。
※ご紹介するストレッチは全ての腰痛を改善するものではありません。無理をせず、重度の痛みなどがある場合には医療機関を受診しましょう。
大腿四頭筋と腸腰筋のストレッチ
方法
- ❶横向きに寝て、上になる脚のひざを曲げ、足の甲を手でつかみます。
- ❷ひざがより曲がるように手で押し込み、その姿勢を30秒間保持します。
- ❸余裕のある方は、その姿勢から上側の脚を後方にゆっくり動かしていき、股関節の付け根(腸腰筋)が突っ張る感覚が得られる位置でストレッチします。腰部が過度に反り返ると腰痛につながる恐れがあるため十分注意しましょう。
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ポイント
- ・ひざを曲げた脚の大腿前面の筋肉(大腿四頭筋)が突っ張っている感覚が得られれば十分です。
- ・無理にひざを曲げようとすると、骨盤を介して腰部が過度に反り返るので注意しましょう。
- ・横に寝転がって、テレビを見ながらでもできます。
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こんな方に適しています
- ・座っている時間や立っている時間、同じ姿勢でいる時間が長い方
- ・ハイヒールを頻繁に履く方 ほか
大腿四頭筋の柔軟性が低いと、骨盤が前傾になりバランスをとるために腰をそらす姿勢になり腰に負担がかかります。普段から柔らかくしておくとよいでしょう。
下腹のインナーマッスルである腸腰筋(ちょうようきん)は、太ももを前に振り出す働きを持ち、立ったり歩いたりといった体を支える日常動作の基盤となる筋肉です。腸腰筋の柔軟性を高めると股関節の可動域が拡大し、足腰の動きもよくなり、腰痛の緩和にもつながると考えられます。
大殿筋と腰方形筋のストレッチ
方法
- ❶床の上に仰向けで大の字に寝て、開いた両腕で地面を押さえます。
- ❷どちらか一方の脚を閉じて、反対の脚を閉じた脚の外側に移動させます。
- ❸移動させるときは、移動方向と逆の方向に顔を向けます。
- ❹移動させた足のつま先が床についたら、その姿勢で30秒間保持します。
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ポイント
- ・地面を押さえるように広げた両腕が、地面から離れないようにしましょう。
- ・つま先がついたらできる限りリラックスし、お尻(大殿筋)やわき腹の奥(腰方形筋)が伸びていることを意識しましょう。
- ・つま先がつかない場合は、つま先の下に枕やクッションを入れ、宙に浮いた状態を避けましょう。
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こんな方に適しています
- ・重い荷物を頻繁に持つ方
- ・育児や介護などで腰をかがめる姿勢が多い方
- ・長時間座っている方
お尻の筋肉である大殿筋が硬いと、腰に負担がかかりやすくなります。
腰方形筋(ようほうけいきん)は腰の深部にある筋肉で、上半身を横に曲げたり、ねじったりするときに働きます。腰痛のある人は、腰方形筋を含む体幹部の筋力に低下傾向が見られるといわれています。ストレッチでよくほぐしておきましょう。
脊柱起立筋群と広背筋のストレッチ
方法
- ❶イラスト上
四つ這いになり、頭と首を屈曲して両腕の間からおへそを覗き、同時に背中を出来る限り丸めます。 - ❷脊柱起立筋群につっぱり感を感じたところで、その姿勢を10〜15秒保持します。
- ❸イラスト下
次に、背中をフラットな状態に戻しつつ、両手を滑らせて体幹を沈めていきます。 - ❹体幹を沈めて肩関節を屈曲し、脇の下の外側の筋肉(広背筋)や前胸部(大胸筋)につっぱり感を感じたところで、その姿勢を10〜15秒保持します。
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ポイント
- ・写真の2つのストレッチを交互に数回繰り返してください。
- ・繰り返していく中で,少しずつ可動範囲を拡大していきます。
- ・肩の痛い方は避けてください。
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こんな方に適しています
- ・猫背の人
- ・長時間座っている人
- ・運動に慣れていない方
脊柱起立筋群(せきちゅうきりつきんぐん)は背中にある筋肉で、腸肋筋(ちょうろくきん)、最長筋(さいちょうきん)、棘筋(きょくきん)の3つから成ります。重たいものを持ち上げるとき、脊柱起立筋に大きな負荷がかかると、筋・筋膜性腰痛を引き起こす可能性があるため、柔軟性を高めておくことが大切です。
広背筋や大胸筋を伸ばすと姿勢がよくなり、腰痛の緩和はもちろん、肩こりの予防にもなります。
日常生活で心がけたい腰痛予防と対策
腰痛の発症や悪化を防ぐために、日常生活の中で心がけたいことをご紹介します。
筋トレをする
先ほどご紹介したストレッチは筋肉を伸ばし、柔軟性を高める作用を持つ運動です。一方、筋トレ(筋力トレーニング)は筋肉を成長させ、持久力を高める運動のことで、筋トレによって筋肉が成長すると、痛みだけでなく日常生活(QOL)の改善にも効果を発揮するといわれています。
ただし、腰痛の原因によっては改善効果が得られにくいこともあるほか、トレーニングをやりすぎてしまい、かえって痛みが増すことも考えられます。無理をせず、自分のペースで行うことを心がけておきましょう。
正しい姿勢を意識する
姿勢は腰痛に影響を与える要因のひとつです。とくに「腰を深く曲げる、ひねる」「長時間、同じ姿勢」が続くと、腰痛の発症や悪化を促す原因になることが知られています。運送業や介護職など、腰に負担がかかりやすい職業に携わっている人は、こうした姿勢をとり続けないように意識しておくとよいでしょう。
また、重い物を急に持ち上げる、急に倒れかかってきた人やものを支えるなどの急激な動作も腰に負荷をかけるため腰痛につながります。
食生活を改善する
バランスのとれた食生活を送ることにより、筋肉を含む全身の疲労改善や老化防止において好ましい作用が期待できます。筋肉のもとになるタンパク質や骨を強くするカルシウムなど、主食、主菜、副菜、果物などをバランスよく摂取し、栄養状態を適正に保ちましょう。
また、十分な睡眠をとることも、体の疲労回復に有効で、腰痛の改善にもつながります。
腰痛にはビタミンがおすすめ
体や筋肉に過度の負担がかかることにより、筋肉や神経への疲労の蓄積が原因となって生じる腰痛には、疲労回復効果が期待できるビタミンB群とビタミンEの摂取がおすすめです。
ビタミンB群のうち、ビタミンB1は、筋肉や神経の疲れをやわらげる働きを持つ栄養素です。豚肉や玄米などに多く含まれています。
ビタミンB6・B12には、神経の機能維持をする働きに関与するといわれています。
ビタミンB6はカツオやマグロなどに、ビタミンB12はカキやあさりなどに多く含まれています。
またビタミンEは、血液の流れに関与するといわれます。ビタミンEはアーモンドやヘーゼルナッツなどのナッツ類に多く含まれています。
こうした栄養は食事からとることが基本ですが、栄養素によっては食事からだけでは不足しがちなものもあります。そうした栄養素は、栄養補給を目的とした錠剤などを利用することで、効率よく補給することが可能です。