腰に違和感がある。腰が痛い。でも、腰痛が起きる原因もよくわからないし、何をやってもよくならないのであきらめているという方もいるかもしれません。厚生労働省によると、一般的に腰痛の約85%はX線検査をしても原因が特定できないとの報告があります。
漢方では、腰痛は五臓の「腎」と関係が深いと考え、腎は人体の生命活動に必要なものだと考えています。漢方では腰痛について、どのように考えているのかを解説します。
【漢方解説】腰痛が起こる原因は五臓の腎が関係している
五臓の腎は、人間の成長と大きく関係しています。腎が不足すると、白髪・耳が聞こえにくい・足腰の衰えなどの老化現象が起こりやすくなります。特に冬は腎に負担をかけるため、腎が弱りやすい季節です。漢方でいう腎には成長・発育をつかさどる、生殖をつかさどる、カラダの体液のバランスを維持する、骨をつかさどるなどの働きがあります。そのため、腎が不足すると、腰がだるい、骨がもろくなるなどの症状が起こります。
漢方で考える腰痛が起こる原因には、次のようなものがあります。
- 腎の不調:年齢によるもの・働きすぎ・乱れた生活習慣・病後・慢性的な病気により、腎の働きが弱くなっている。
- 気滞:ストレスや緊張状態が続き、カラダの中の気(エネルギー)の流れが悪くなっている。
- 瘀血:運動不足やストレスなどにより、カラダの冷えが起こり、血行が悪くなっている。
- 冷えや湿気:湿気の多い雨の日、寒い日は、カラダの中に寒湿の邪気(カラダに悪い影響を与える気)が入りやすくなるため、痛みが強くなる。
冬の腰痛の予防のために知っておきたいこと
冬は腰痛が起こりやすい季節です。腰痛を防ぐためには、次のようなことに注意しましょう。冬に無理な行動を起こすと、春以降も体調不良を起こしやすくなります。
●首・腰・足首などの冷えに注意する
冷えや湿気は、腰痛を起こす原因です。首・手首・足首の3つの首に血流の多い血管が集まっているため温めると全身の血液の流れがよくなり、カラダを温めることができます。また、カラダの冷えを緩和するために、腰のあたりを腹巻きやカイロなどで温めましょう。
●腎の働きを高める食材をとる
腰痛が起こる原因の一つは、腎の不調です。特に、冬に起こりやすい腰痛には、腎の働きを助ける食材で腎の不調をおぎなうことが大切です。
●エネルギーをたくわえる
冬は、植物が枯れて、動物が冬眠するように、漢方では人間も他の季節よりのんびり過ごすことが大切だと考えられています。例えば、冬に無理なダイエットをはじめたり、運動を始めたりすることはあまりよくありません。カラダに負担のかかる行動は控えたほうがいいでしょう。
●夜は早く寝て、日が昇る頃起きる
冬は、他の季節に比べてできるだけカラダを休めることが大切だと考えられています。普段よりも、できるだけ早くベッドに入り、日が昇る頃に起きるのが良いと考えられています。
【腰痛の方向け養生】食生活を見直すヒント
腰痛が起こりやすい方は、普段の食生活や生活習慣を見直すことも必要です。まずは、自分の腰痛がどんなときに起こりやすいか、または自分の体質について調べてみましょう。原因に合わせて次のような食材をとることをおすすめします。
●冬に腰痛が起こりやすい場合
冬の季節におすすめの食材は「黒い食材」です。生命エネルギーを高める根菜類は、腎の働きに必要な陽の気を得ることができます。黒い食材には、黒きくらげ・黒豆・ひじき、わかめなどの海藻類、黒糖などがあります。エネルギー不足を感じる日は、気を補う食材山芋・牛肉・羊肉などをとりましょう。
●ストレスが溜まっている場合(気滞)
気滞体質でストレスが溜まっている場合は、気のめぐりをよくする食材がおすすめです。
野菜では、たまねぎ・らっきょう・春菊など。果物では、みかん・ゆずなど柑橘系のものがおすすめです。
●カラダの血が滞っている場合(瘀血)
瘀血体質でカラダの血行が悪くなっている場合は、カラダの血流をよくする食材がおすすめです。野菜では、れんこん・チンゲン菜・くわいなど。果物では、桃やリンゴ、ぶどうなどがあります。
●カラダが冷えている場合(寒邪)
気温の低い日は、カラダの中から温める食材がおすすめです。生姜・にんにく・シナモンなどがあります。お酢や日本酒などのお酒もカラダを温める効果があります。
●湿気の多い日や雨が降っている日(水滞)
雨の降る日は、カラダの中に湿気がたまりやすくなります。雨の日など湿気の多い日には、カラダの中の水分のめぐりをよくする食材がおすすめです。とうもろこし・小豆・黒豆などはカラダの中の余分な水分を外に出す働きがあります。
腰痛が起きたときに役立つ漢方薬
腰痛が起きたときに選ぶ漢方薬は、自分の体質や腰痛が起きた原因によって選ぶことが大切です。腰痛には次のような漢方薬があります。
■八味地黄丸
腎の働きが弱くなる高齢者の方によく使われる漢方薬です。カラダを温める作用がある漢方薬で、気、血(けつ)、水(すい)をおぎない、血行をよくする作用もあります。体力は中程度以下で、疲れやすく、カラダがだるい、下半身が冷えやすい方によく使われています。高血圧・頻尿・耳鳴りなど老化が原因で起こる症状によく使われます。ただし、体力のある人、のぼせやすい人には向いていません。八味地黄丸には、地黄(ジオウ)・山茱萸(サンシュユ)・山薬(サンヤク)・沢瀉(タクシャ)・牡丹皮(ボタンピ)・桂皮(ケイヒ)・附子(ブシ)・茯苓(ブクリョウ)が含まれています。
■当帰芍薬散
冷えや女性特有の悩みによく使われる漢方薬です。こちらもカラダを温める作用のある漢方薬で、血(けつ)の不足をおぎない、カラダの中のめぐりをよくします。痩せ型、体力のない方で、寒がり・カラダの血行がよくない方によく使われています。生理不順・生理痛・更年期障害など女性特有の症状の他に、めまい・むくみ・肩こり・頭重などにも利用されます。ただし、胃の弱い方は注意が必要です。当帰芍薬散には、芍薬(しゃくやく)・沢瀉(たくしゃ)・蒼朮(そうじゅつ)・茯苓(ぶくりょう)・川芎(せんきゅう)・当帰(とうき)が含まれています。
腰痛にお悩みの方は、自分の腰痛のタイプを知り、適した食材や漢方薬を試してみることをオススメします。