明治大学(明大)は1月14日、人体に無害な近赤外光を用いた筋血流計測技術を開発し、日本の「手技療法」に、肩こりがよく起きる僧帽筋の血流を改善させる効果があることを明らかにしたと発表した。

同成果は、明大大学院 理工学研究科の松田康宏大学院生、同大学 理工学部 電気電子生命学科の小野弓絵教授らの研究チームによるもの。

主に筋肉に対して行う、揉む、擦る、押す、叩くなどの手技療法は、運動器やスポーツ外傷の治療・回復、障害の予防法として広く普及しており、肩こり、背中の張り、五十肩・四十肩痛や腰痛などの緩和目的で施術を受ける人も多い。

こうした手技療法は筋肉の緊張や痛みを和らげ、血流を促進させて体内の老廃物を除去すると考えられてきたが、これまで手技療法の効果は施術者と手技療法を受けた側との主観的な評価のみによって行われ、客観的な評価に乏しいことが課題だったという。

こうした背景を受け、自らも柔道整復師である松田大学院生は、体内に照射した近赤外光の拡散状態から生体組織の血流変化を計測可能な拡散相関分光法(DCS)に着目。そして今回、肩こりの好発部位である僧帽筋(延髄から両肩、そして背中の中程まで菱形をした筋肉)を連続的に計測可能な筋血流イメージング手法を開発することに成功した。

計測の結果、5分間の手技療法により僧帽筋の平均血流が約1.4倍に増加していることが確認され、これは同じ時間だけ安静にしていた場合よりも有意に増加している値であったという。また、手技療法の前後では、心拍数、血圧、自律神経活動は変化せず、手技療法は全身の循環状態に影響を及ぼすことなく、目的とする筋の血流のみを増加させる働きがあることも判明したほか、肩こりがある人(僧帽筋部が硬い人)と肩こりがない人では、肩こりがある人の方が、手技療法により筋血流がより増加したことも判明したという。

これらの結果は、手技療法によって肩の僧帽筋の血流が促進されること、肩こりのように筋肉が硬くこわばった人は手技療法による血流促進効果が高いことを示すものだという。