腰痛の痛みの軽減に「ツボ」を利用してみませんか?
西洋医学は病気に対してピンポイントに処置をする医学ですが、東洋医学は病気を単独に捉えるのではなく、全体のつながりやバランスを整えることに着目しています。ツボ(経穴)療法も、そうした体内の「気・血・水」というさまざまなエネルギーのつながり、巡りを大切にする観点から生まれてきています。その点で、特定できないさまざまな要因が折り重なって起こる「腰痛」には、ツボ療法、が向いているのかもしれません。
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ツボを押すとなぜ痛みが軽減するのか
ツボの正式名称は「経穴(けいけつ)」。経穴は、身体の内部と体表を結ぶエネルギーライン「経路(けいろ)」の上に400以上も点在しています。この経路には、身体の表面を通るラインもあれば内側を通るラインもあります。
身体の表面のツボを押すと身体の内側の不調が改善するのは、この経路のエネルギーの流れのおかげ。たとえば腰痛の場合、手の甲を押すと痛みが軽減しますが、痛む箇所とかけ離れたところを押しても効果があるのは、この身体中に張り巡らされた経路のおかげなのです。
また、ツボひとつにはひとつの効能しかないなどということはありません。『冷えに効くツボは腰痛や肩の不調にも効く』などのように、それぞれのツボ、そのひとつひとつにはさまざまな働きが秘められています。
東洋医学で考える身体の不調の原因とは
東洋医学には「気・血・水」という独自の考え方があります。「気」は身体を動かす生命エネルギー、「血」は栄養を身体に補い精神を安定させ、「水」は体液を表します。東洋医学では、人間の身体はこの3つの要素で構成され、このバランスが人それぞれで違うことで、その人の体質が現れると考えます。
そして、この「気・血・水」は、季節や気温、気分など、さまざまな要因によって過不足や滞りが起こります。人の身体の不調の原因は、こうした「気・血・水」のバランスの不具合から起こる、というのが東洋医学の考え方というわけです。
ですからツボ押しとは、経路のエネルギーの流れを利用して「気・血・水」のバランスを調節していくこと、と考えてください。不眠や緊張、もの忘れやだるさなど、よくある「不調や不具合」でさえツボ押しが解決してくれるのも、同様の理由からです。
ツボ押しのタイミングと強さ
ツボ押しは、心身が緩んでいる状態で行うことが効果的です。たとえば、入浴後、少しリラックスしてベッドに入る2時間前までくらいがベストタイミング。
押し方はごく優しい圧、心地よい強さで大丈夫。痛みを感じるような強い押し方ではなく「気持ちいい」と感じる圧でいたわってあげるイメージです。
押すのが難しければ、トントンと軽く叩く感じでもかまいません。そして回数は、自分がすっきりし、押していても心地よさがなくなったら終了と心得ましょう。
また、「押す」ことだけにこだわらず、さする、もむ、温めるという手法も効果的です。いずれにせよ、自分の心地よさが指標になります。
ツボはピンポイントを目指さなくても大丈夫
ツボは、いつもまったく同じところにあるわけではありません。出っ張ったり引っ込んだり少し移動したりもします。ですからピンポイントで「ココ」にこだわる必要はありません。「おおよそこの辺り」をゾーンで押したり、さすったり、軽く叩いたりして、心地よいと感じられた場所があなたのツボです。
目が疲れたら目頭をつまむ、頭痛がしたらこめかみを揉む、肩が凝ったらトントン叩くなど、私たちがいつも何気なくやっているあの動作も、実はツボ押しなのです。あまり神経質になる必要はないので、「心地よさ」を目指して気軽に押してみましょう。
ここが腰痛の痛みを軽減する基本のツボ!
腰痛の基本のツボが「命門」「腎兪」「志室」の3つです。それぞれピンポイントをゆっくり、指先をまわすように押してみたり、ちょうどツボが横並びに並んでいるので、この一帯を揉んだりさすったりトントン叩いてみましょう。
ベッドに横になり、ツボの位置にテニスボールやゴムボールを入れて身体ではさみ、体重を使って押す方法もあります。
命門(めいもん)
位置:背中側。おへそのちょうど真裏の背骨の上。
経路から外れている「奇穴」のひとつで、全身の不調を整えてくれるツボです。
腎喩(じんゆ)
位置:命門から指2本外側の左右。ウエストのくびれラインの高さ。
女性の更年期のさまざまな障害も緩和してくれるツボです。
志室(ししつ)
位置:命門から指4本外側の左右。おへその裏側でウエストのくびれラインの高さ。
生殖器系、泌尿器系の疾患にも働いてくれるツボです。
ぎっくり腰など強い痛みの軽減には手の甲のツボを押す
ぎっくり腰など強い痛みの軽減には、腰を直接押すのではなく、エネルギーラインでつながっている手の甲の「腰腿点」というツボを、グーッと強めに押してみましょう。押すと、腰にエネルギーが伝わり、腰痛がフッと軽減されラクになるのがのがわかります。
腰腿点(ようたいてん)
位置:人差し指と中指の骨が交わるところの少し上と、薬指と小指の骨が交わる少し上。少しくぼんだところ。左右両方の手にあります。
生理痛や便秘にも試してほしいツボです。
冷えからくる腰痛には足やお尻のツボを温める
冷えは血行不良の元。冬の寒い時期など、何もしていないのに腰が痛むことがあります。そんな冷えからくる腰痛には、冷えの治療に使われるツボを利用しましょう。
まず足の「三陰交」というツボですが、腎臓や肝臓、消化器系の働きを助けてくれるうれしい効果もあります。ここを押したりさすったり、普段からレッグウォーマーなどで温めておくことで、腰痛の改善や予防につながります。
また、「次髎」というお尻のツボは、腰回りの血行を促してくれます。子宮や卵巣など、女性特有のお悩みにも向いているツボです。「次髎」を押すには、仰向けになり、拳を軽く握ってツボに当て、体重を乗せてみてください。このツボを温めることも、冷えからくる腰痛の手当てにおすすめです。
三陰交(さんいんこう)
位置:内くるぶしの上から指4本分上がったところ。左右両方の足にあります。
腎臓や肝臓、消化器系にも効果があり、また、婦人科系のさまざまな不調も軽減してくれるツボです。
次髎(じりょう)
位置:骨盤の中央の仙骨にあるくぼみの、上から2番目のくぼみ部分です。左右にあります。
頭痛や肩こり、PMS(月経前症候群)など婦人科系の不調にも働くツボです。
腰痛のツボ 痛みの軽減や予防に東洋医学を利用してみよう
腰痛改善のためにはさまざまな方法がありますが、ツボもその一つ。ツボを覚えておくことで、つらい痛みの軽減や、腰痛の予防に役立ちます。普段おこなっている湿布やストレッチといった腰痛ケア方法とともに、長い歴史を持つ東洋医学での腰痛ケアについても知ることで、より自分向きの腰痛ケア方法が見つかるかもしれませんね。
例えば、余裕のない時に起きた腰痛に手の甲のツボを押して痛みを緩和させることも可能です。今回ご紹介した他にも腰痛改善のツボがありますので、ご自分のタイプに合った腰痛軽減や腰痛予防の方法を探してみてください。