腰痛 | 一宮市 FUJI整体院 一宮院

腰痛

腰、外来受診の理由として最も多いものの1つです。通常、これらの痛みは、筋骨格系の問題、なかでも脊椎の骨(背骨、すなわち椎骨)、椎間板、それを支持する筋肉や靱帯など、脊椎に関係する問題から生じます。ときとして、筋骨格系を侵さない病気によって腰痛が生じることがあります。

腰痛は、加齢とともにみられる頻度が増え、60歳以上の人の半分以上に起こります。治療費、障害補償給付金、仕事を失った場合の損害額など、非常に多くの費用がかかります。職場で起こる腰のけがの数は減少しており、その理由はおそらく、問題に対する認識と予防策が改善したためです。

脊椎(脊柱)は、背骨(椎骨)で構成されています。椎骨は軟骨の薄い層で覆われていて、椎骨同士の間は衝撃を吸収するゼリーのような物質と線維軟骨でできた椎間板で区切られ、それがクッションの働きをしています。椎骨は靱帯と筋肉によって位置が保たれ、そうした筋肉には次のものが含まれます。

  • ‎脊椎の両側に沿う2つの腸腰筋

  • 脊椎全体の後方に沿っている2つの脊柱起立筋

  • 椎骨と椎骨の間を通る、多数の短い傍脊柱筋群

これらの筋肉が脊椎の安定を助けています。胸郭の一番下から骨盤へ続く腹筋も、腹腔内の臓器を支えることで、脊椎を安定させるのに役立っています。

脊椎の中には、脊髄が収容されています。脊髄に沿って、脊髄神経が椎骨同士の側方の間から出て全身の神経とつながっています。脊髄神経の脊髄に最も近い部分は脊髄神経根と呼ばれています。脊椎が損傷を受けると、位置的に脊髄神経根が圧迫されて痛みを生じることがあります。

腰椎は、胸部と骨盤や脚とを連結し、体を回す、ねじる、前に曲げるという動作を可能にしています。さらに、立つ、歩く、物を持ち上げるという動作のための強度を体に与えています。このように、腰は日常生活のほとんどあらゆる動作に関わっています。腰痛があると、多くの活動が制限され、生活の質が低下することがあります。

下位脊椎(腰椎)
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種類

 

よくみられる腰痛の種類には、局所的な痛み、放散痛、関連痛があります。

 

局所的な痛みは、腰の特定の領域だけに起こります。最も多いタイプの腰痛です。通常、原因は、椎間板の小さな損傷、関節炎、筋肉の挫傷、ねんざ、またはその他のけがです。局所的な痛みは、うずくような痛みが途切れなく続く場合もあれば、ときに鋭い痛みが間欠的に起こる場合もあります。けがが原因の場合に、突然痛みを感じることもあります。局所的な痛みは、体勢を変えることで、悪くなったり和らいだりすることがあります。腰を触ると痛みを感じることもあります。筋肉のけいれんが起こることがあります。

 

放散痛は、通常は腰から脚へと広がるうずくような鈍い痛みですが、鋭く強い痛みの場合もあります。脚全体ではなく、脚の側面や後ろだけに生じるのが一般的です。痛みは、足まで広がることもあれば、膝までで止まることもあります。一般的に放散痛がある場合は、椎間板ヘルニア、変形性関節症脊柱管狭窄症などの病気によって、神経根が圧迫されていることが示唆されます。両脚を伸ばした姿勢で、せきやくしゃみをしたり、いきんだり、体を前に曲げたりすると、痛みが誘発されることがあります。神経根が強く圧迫されているときや脊髄も圧迫されているときは、痛みに伴って、脚の筋力低下や、チクチクする感覚が起こることがあり、さらには感覚が消失することがあります。まれに尿失禁便失禁がみられることがあります。

 

関連痛は、実際の痛みの原因とは違う場所に感じる痛みです。例えば、心臓発作の患者の一部は左腕に痛みを感じます。内臓から腰への関連痛は、深部のうずくような痛みである傾向があり、正確な位置を特定するのが困難です。筋骨格系の病気による痛みとは異なり、一般的には動作によって悪化することはありません。

原因

ほとんどの腰痛の原因は、脊椎やその周辺の関節、筋肉、靱帯、神経根、または椎骨の間の椎間板の病気です。そうした場合、しばしば具体的な原因が一切特定できません。原因が何であれ、腰痛は疲労、肥満、運動不足など多くの要因によって悪化します。また、痛みを伴う脊椎の病気がある場合は、脊椎周辺の筋肉の反射による収縮(けいれん)が起こる可能性があります。このけいれんは、すでにある痛みを悪化させます。ストレスで腰痛が悪化することがありますが、その仕組みはよく分かっていません。

ときとして、腰痛の原因が脊椎以外の病気であることがあり、例えばがん、婦人科の病気(例えば月経前症候群)腎臓の病気(例えば腎結石)、泌尿器の病気(例えば、腎臓膀胱前立腺の感染症)、消化器の病気や、脊椎付近の主要な動脈の病気などがあります。

一般的な原因

 

腰痛の最も一般的な原因は、以下のものです。

  • 筋肉の挫傷と靱帯のねんざ

 

筋肉の挫傷と靱帯のねんざは、物を持ち上げたり、運動したり、転倒や自動車事故などで予想外の方向に体が動いたりしたときに起こります。挫傷やねんざは、重量挙げで重いウェイトを地面から一気に持ち上げたとき、アメリカンフットボールで敵のラインマンを押しているとき、バスケットボールでリバウンドを取ってすぐにターンしてドリブルしたとき、野球でバットを振ったとき、ゴルフでクラブを振ったときなどにも起こります。腰のけがは、体調が悪いときや背骨を支える筋肉が衰えているときに起こりやすくなります。姿勢が悪いこと、不適切な姿勢で物を持ち上げること、太りすぎ、疲労も、けがの一因です。

 

腰痛のその他の一般的な原因としては、以下のものがあります。

  • 椎間板破裂や椎間板ヘルニア( 椎間板ヘルニア

  • 線維筋痛症

    変形性関節症(変形性関節炎)は、椎骨を覆って保護している軟骨の変性を引き起こします。この病気の原因は、少なくとも部分的には、長年の使用による摩耗や断裂にあると考えられています。1つの関節、ないしは一連の関節に繰り返し負荷がかかる人では、変形性関節症が起こりやすくなります。椎骨の間にある椎間板が変性し、椎骨同士の間隔が狭まって、しばしば脊髄神経根が圧迫されます。椎骨に異常な骨の突起(骨棘[こつきょく])ができることがあり、脊髄神経根を圧迫することがあります。これらの変化はすべて、腰のこわばりだけでなく腰痛の原因となります。

     

    圧迫骨折は、骨粗しょう症により骨密度が低下しているときによく起こり、一般的に骨粗しょう症は、加齢に伴い発生します。椎骨は骨粗しょう症の影響を特に受けやすいところです。圧迫骨折(突然背中にひどい痛みを引き起こすことがあります)には、脊髄神経根の圧迫(背中に慢性の痛みを引き起こすことがあります)が伴うことがあります。しかしながら、骨粗しょう症を原因とする骨折のほとんどは背中の上部や中央に発生し、痛みも腰よりも背中の上部や中央に現れます。

     

    椎間板破裂や椎間板ヘルニアも腰痛の原因になります。椎間板は、丈夫な外殻と軟らかいゼリー状の中身から構成されています。重い物を持ち上げたときなどに、椎間板が突然上下の椎骨に圧迫されると、外殻が裂けて(破裂して)痛みが生じることがあります。外殻の裂け目から椎間板の中身が外に押し出され、飛び出す(ヘルニアになる)こともあります。この飛び出た部分が、隣接する脊髄神経根を圧迫したり、刺激したり、損傷を与えることさえあり、さらに強い痛みが起こります。神経を侵す椎間板破裂や椎間板ヘルニアは坐骨神経痛を引き起こすこともよくあります。MRI検査などの画像検査によって、症状がない人でも椎間板の膨らみが示されることがあり、この膨らみは、通常は何の症状も問題も起こしません。

    椎間板ヘルニア
    椎間板ヘルニア

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    椎間板ヘルニア

     

    脊椎の椎間板を覆う丈夫な外殻が破れて(破裂して)、痛みが生じることがあります。軟らかいゼリー状の内身が外殻から外へ飛び出す(ヘルニアになる)ことがあり、その場合、痛みがさらに強まります。痛みは、ヘルニアの膨らみが隣にある脊髄神経根を圧迫するために起こります。ときには、その神経根に炎症が起こったり、損傷が生じたりすることがあります。

     

    椎間板ヘルニアの80%以上は腰に発生します。30~50歳の人に最も多くみられます。この年齢層では、椎間板の外殻が弱くなります。強い圧力がかかっているゼリー状の中身は、外殻の裂け目や弱くなった部分から、外へ押し出されて膨らむことがあります。50歳を過ぎると、椎間板の中身が硬くなり始め、ヘルニアが起こりにくくなります。

     

    椎間板は、急激な外傷や、繰り返し起こった軽い損傷により、ヘルニアを起こすことがあります。太りすぎや、重い物を持ち上げること(特に不適切なやり方で持ち上げる場合)によって、ヘルニアのリスクが高まります。

     

    椎間板ヘルニアはしばしば、MRI検査やCT検査などの画像検査で明らかに飛び出してヘルニアを起こしているように見える場合でも、症状がないことがあります。症状のない椎間板ヘルニアは、年齢が高くなるほどよくみられます。しかし、椎間板ヘルニアが痛みを引き起こすこともあり、痛みには、わずかな痛みから体を衰弱させるほどの痛みまであります。動かすと痛みが強くなることがよくあります。

     

    痛みが生じる部位は、どの椎間板がヘルニアを起こし、どの脊髄神経根が影響を受けているかによります。痛みは、椎間板ヘルニアに圧迫された神経の経路に沿って感じることがあります。例えば、椎間板ヘルニアはよく坐骨神経痛(坐骨神経に沿った、脚の後ろ側に広がる痛み)を引き起こします。

     

    さらに、椎間板ヘルニアによってしびれや筋力低下が起こる場合があります。神経根への圧迫が強いと、脚が麻痺することがあります。まれに、椎間板が脊髄を直接圧迫することがあり、両脚の筋力低下や麻痺が起こる可能性があります。馬尾(脊髄の一番下から伸びている神経の束)が侵されると、排尿や排便の制御機能が失われることがあります。これらの深刻な症状が現れた場合は、直ちに受診する必要があります。

     

    大部分の人は、まったく治療を受けることなく、通常は3カ月以内に(しばしばもっと早く)回復します。患部をアイスパックなどで冷やしたり、温熱パッドなどで温めたり、市販の鎮痛薬を使用したりすると、痛みの緩和に役立つことがあります。ときに、ヘルニアが生じた椎間板の一部または全体、および椎骨の一部を切除する手術が必要になる場合もあります。椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛のために手術を受けた人の10~20%で、別の椎間板の破裂が起こります。

    椎間板ヘルニア

     

     

    坐骨神経痛とは

     

    2本の坐骨神経は体内で最も太く長い神経です。これは腰部の脊髄から出ているいくつかの神経根によってできています。手の指ほどの太さがあります。坐骨神経は体の左右にあり、それぞれ下位脊椎から出て、股関節の後ろを通り、殿部から膝の裏側へと続いています。そこで坐骨神経は数本に枝分かれし、さらに足へと降りていきます。坐骨神経や坐骨神経を形成する神経根が締めつけられたり、炎症が起きたり、損傷したりすると、痛み(坐骨神経痛)が起こり、その痛みが坐骨神経に沿って足へと放散する可能性があります。坐骨神経痛は、腰痛がある人の約5%にみられます。

     

    一部の患者では、原因が見つかりません。椎間板ヘルニア、変形性関節症による骨の異常な突出、脊柱管狭窄症、または靱帯のねんざによる腫れが原因としてみられる患者もいます。まれに、骨パジェット病、糖尿病による神経の損傷(糖尿病性神経障害)、腫瘍、血液の蓄積(血腫)、または膿の蓄積(膿瘍)が神経を圧迫することにより坐骨神経痛の原因になることもあります。坐骨神経痛を起こしやすい人もいると考えられます。

     

    通常、坐骨神経痛は左右どちらか一方だけに起こります。チクチクする感覚、しつこい痛み、またはビーンと走るような痛みを引き起こすことがあります。脚または足に、しびれを感じることもあります。歩いたり、走ったり、階段を昇ったり、脚を伸ばしたり、ときにせきをしたり、いきんだりすると痛みが悪化し、背中を伸ばすか座ると和らぎます。

     

    痛みが自然に消えることもしばしばあります。安静や、就寝時に硬いマットレスを使用すること、市販のアセトアミノフェンや非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の服用、患部を温めるか冷やすことで、治療は十分な場合があります。多くの人は、眠るときに横向きに寝て膝を曲げ、膝の間にクッションをはさむと痛みが和らぎます。ウォーミングアップをしてから、やさしくハムストリングの筋肉のストレッチをするのも役立つ可能性があります。

     

    ときとして、坐骨神経痛の原因に応じて他の治療を行うことがあります。治療としては、理学療法、コルチコステロイドの腰への注射、抗てんかん薬、三環系抗うつ薬、長引く強い痛みに対して行う手術があります。

    坐骨神経痛とは

     

    脊柱管狭窄症は、脊柱管(脊椎の中心を貫き、脊髄を収容している)が狭くなっている状態です。これは、高齢者の腰痛の一般的な原因です。脊柱管狭窄症は、生まれつき脊柱管が細い中年の人にも発生します。次のような病気によって起こります。

    • 骨パジェット病

      脊柱管狭窄症は、腰痛ばかりでなく坐骨神経痛を引き起こすことがあります。

       

      脊椎すべり症は、腰の椎骨が部分的にずれている状態です。これは通常、よくみられる骨の先天異常(脊椎分離症)で椎骨の一部が弱くなっている人に起こります。通常は、青年期か成人期の若い頃(運動選手に多い)に、軽いけがによって椎骨の一部が骨折します。するとその椎骨は、その下にある椎骨の上を前方に滑ります。滑りが大きくなると、痛みが生じることがあります。脊椎すべり症は高齢者にも起こります。脊椎すべり症の患者では、腰部脊柱管狭窄症の発生リスクが高くなります。

      脊椎すべり症
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      線維筋痛症は、全身の痛み(ときに腰痛を含む)の一般的な原因の1つです。この病気は、腰以外の場所の筋肉や他の軟部組織に慢性の広範囲にわたる(びまん性の)痛みを引き起こします。

       

      知っていますか?

      • 背筋に加えて腹筋も強化すると、脊椎を支え腰痛を防止するために役立ちます。

あまり一般的でない原因

あまり一般的でない原因としては以下のものがあります。

あまり一般的でない原因には、帯状疱疹や、強直性脊椎炎などいくつかのタイプの炎症性関節炎もあります。

評価

医師は、重篤な病気を発見することを目標にします。腰痛はいくつかの問題を原因にして生じることが多いため、単一の原因を診断することができない場合があります。原因は筋骨格系の病気で、どの程度重篤な可能性が高いか、ということしかいえない場合もあります。

警戒すべき徴候

 

腰痛がみられる場合は、特定の症状や特徴に注意が必要です。具体的には以下のものがあります。

  • がんの病歴

  • 免疫系の働きを抑制する薬の使用、HIV感染またはエイズ注射薬の使用、最近手術を受けた、外傷—感染症のリスクを高めます

  • しびれ、片脚または両脚の筋力低下、排尿ができない(尿閉)、尿失禁または便失禁—神経の損傷を示唆する症状です

  • 発熱

  • 体重減少

  • 夜間のひどい痛み

  • 呼吸困難、蒼白、ふらつき、突然の発汗、頻拍、意識喪失—腹部大動脈瘤を示唆する症状です

  • 嘔吐、ひどい腹痛、黒い便や血便—消化器疾患を示唆する症状です

  • 排尿困難、血尿、左右片側から鼠径部に広がる重度のけいれん痛—尿路疾患を示唆する症状です

受診のタイミング

 

発熱や、神経の損傷、腹部大動脈瘤、消化器疾患、または尿路疾患を示唆する症状がある場合は、直ちに医師の診察を受ける必要があります。他の大半の警戒すべき徴候がみられる場合は、1日以内に医師の診察を受ける必要があります。痛みがひどいものではなく、6週間以上続く痛み以外に警戒すべき徴候がなければ、医師の診察を受ける必要性はそれほど緊急のものではありません。

医師が行うこと

 

医師はまず、症状と病歴について質問します。次に身体診察を行います。病歴と身体所見から、多くの場合、原因と必要な検査が推測できます( 腰痛の主な原因と特徴)。

 

医師から痛みについて次のような質問があります。

  • どのような痛みですか。

  • 痛みの強さはどれくらいですか。

  • どこに痛みがあり、どこに広がりますか。

  • どういうことで痛みが和らいだり悪化したりしますか(例えば、体勢を変える、体重を支えるなど)。

  • いつ、どのように痛みが始まりましたか。

  • ほかの症状はありますか(例えばしびれ、筋力低下、尿閉、失禁など)。

 

次のように、痛みの特定の特徴が、考えられる原因の手がかりになることがあります。

  • 1つの部位の痛みで、触ると痛み、体勢を変えたり体重を支えると悪化する場合は、通常は局所的な痛みです。

  • 通常、坐骨神経痛など脚に広がる痛みは、脊髄神経根の圧迫によって起こります。

  • 痛みが中程度から重度で、腰の体勢を変えても影響がなく、圧痛がなければ、関連痛である可能性があります。

  • 痛みがずっと続き、ひどい痛みで、だんだん悪化していき、安静にしても軽減しない場合、特に痛みで夜に眠れなくなる場合は、椎間板ヘルニアの可能性もありますが、がんまたは感染症が疑われることがあります。

 

身体診察では、脊椎と、鼠径部や脚につながる神経の評価に重点を置き、神経根の圧迫の徴候を探します。神経根の圧迫の徴候は侵された神経根により異なり、例えば、片脚の1つの筋群の筋力低下、反射の異常(膝の下の腱や足首の後ろの腱を軽くたたいて検査する)、脚の部分的な感覚の低下、非常にまれに尿閉(膀胱に尿がたまっても排尿できない状態)、尿失禁便失禁などがあります。

 

医師は、患者に特定の動作を行ってもらい、それによって痛みの種類を判定することもあります。例えば患者に、あお向けに寝て、膝を曲げずに脚を持ち上げるよう指示し、その後立ち上がって前屈するよう指示します。腹部で圧痛や腫瘤の有無や脈拍をチェックすることもあり、特に腹部大動脈瘤の可能性がある55歳以上の患者で行います。男性では直腸指診を行って前立腺を診察し、女性では内診を行って内性器を診察することがあります。

 

痛みについての情報や患者の病歴、身体診察の結果から、医師は考えられる原因を判断できることがあります。

 

検査

 

たいていの腰痛は、変形性関節症、挫傷やねんざ、または軽い筋骨格系の病気から起こり、6週間以内に治るため、通常、検査は必要ありません。以下の場合には、しばしば画像検査が必要です。

  • 他の原因が疑われる場合。

  • 警戒すべき徴候がみられる場合。

  • 腰痛が長引く場合。

 

初期治療で反応が得られなかった場合や、症状が悪化したり変化したりした場合も、検査を行うことがあります。

 

腰のX線検査では、骨だけが示されます。変形性関節症による変性変化、圧迫骨折脊椎すべり症強直性脊椎炎の発見に役立つことがあります。しかし、MRI(磁気共鳴画像)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査では、より鮮明な骨の画像が得られ、椎間板や一部の神経などの軟部組織を写すことができます(特にMRI検査)。通常、MRI検査やCT検査は、骨の微細な変化を引き起こす病気や軟部組織の病気がないかを確認する際に必要です。例えば、MRI検査やCT検査によって、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、がん、感染症の診断を、確定したり否定したりできます( 椎間板ヘルニア)。これらの検査は、神経が圧迫されているかどうかを示すこともできます。

 

脊髄圧迫が疑われる場合、直ちにMRI検査が行われます。まれに、MRI検査の結果がはっきりしない場合に、CTによる脊髄造影検査が必要なことがあります。まれに、がんや感染症が疑われる場合に、組織の採取(生検)が必要になります。ときとして、神経根の圧迫の有無やその位置と、ときにその持続期間や重症度を確認するために、筋電図検査や神経伝導検査が行われることもあります。

予防

腰痛を予防するための最も効果的な方法は、定期的に運動することです。有酸素運動、特定の筋力強化運動、ストレッチ運動が役に立ちます。

水泳やウォーキングなどの有酸素運動は、全身の健康状態を改善し、筋肉を強化します。

腹部、殿部、背中の筋肉(コアマッスル)を強化し、ストレッチする特定の運動は、脊椎を安定させ、脊椎のクッションの役目をしている椎間板と、脊椎の位置を保つ靱帯にかかる負担を軽減するのに役立ちます。

筋力強化運動には、骨盤を傾ける運動や腹筋運動などがあります。ストレッチ運動には、膝を胸につけるストレッチなどがあります。ストレッチ運動によって腰痛が悪化する人もいるため、注意深く行うべきです。原則として、腰痛が起こったり、痛みが強くなったりする運動は、どんなものでも中止します。運動は筋肉に軽い疲労を感じるまで繰り返すべきですが、完全に疲労するまで続けてはいけません。それぞれの運動中に、呼吸し続けることが重要です。腰痛がある場合は、運動を始める前に医師に相談するべきです。

 

腰痛を予防するための運動

 

骨盤を傾ける運動

 

あお向けに寝て膝を曲げ、かかとを床につけて、体重をかかとに乗せます。腰を床に押しつけ、殿部を締め(殿部を床から1センチメートルほど浮かす)、腹筋を締めます。そのままの姿勢で10まで数えます。20回繰り返します。

腰痛を予防するための運動

 

腹筋運動

 

あお向けに寝て、膝を曲げ、足を床につけます。手を胸の上で組みます。頭を起こさない(あごを胸につけない)ようにしながら、腹筋を締めてゆっくりと肩を床から約25センチメートルもち上げていきます。次に腹筋を緩めて肩をゆっくりと下ろしていきます。これを10回ずつ、3セット行います。

腰痛を予防するための運動

 

膝を胸につけるストレッチ

 

あお向けに寝ます。両手で片方の膝の裏を持って胸の方へ引き寄せます。そのままの姿勢で10まで数えます。ゆっくりと脚を戻し、次に反対側の脚も同様に行います。この運動を10回繰り返します。

腰痛を予防するための運動

運動は適正体重の維持にも役立ちます。体重の負荷がかかる運動は、骨密度の維持に役立ちます。したがって、運動することで、骨粗しょう症肥満という腰痛につながる2つの状態の発生リスクを減らすことができます。

立っているときや座っているときに良い姿勢を保つと、腰にかかる負担が減ります。前かがみの姿勢は避けるべきです。椅子の座面を調節することで、足の裏全体が床につき、膝がやや上向きに曲がり、腰が椅子の背もたれにぴったりつく高さにできます。腰の支えがない椅子の場合は、腰の後ろにクッションをはさむとよいでしょう。脚を組まずに、両足の裏を床につけて座ることが推奨されます。長時間の立ちっぱなしや座りっぱなしは避けるべきです。避けられない場合は、姿勢を頻繁に変えることで背中にかかる負担を減らすことができます。

寝るときは、硬さが中ぐらいのマットレスの上で楽な姿勢をとることが推奨されます。あお向けの姿勢で眠る人は、膝の下にクッションを置くとよいでしょう。横向きの姿勢で眠る人は、枕で頭を支えて頭がまっすぐになるようにします(ベッドの方や天井の方に傾かないようにします)。背部痛が和らぐのであれば、膝の間にもクッションをハサミ、股関節と膝をわずかに曲げるようにします。

背部痛がある場合の睡眠時の姿勢
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物を持ち上げるときの正しい方法を覚えておくと、背中のけがの防止に役立ちます。股関節の向きは、肩と揃えます(すなわち、左右どちらにもひねらないようにします)。ものを拾い上げる際に、両脚がほぼまっすぐな状態で腰を曲げて腕を伸ばすことは、してはいけません。そうではなく、股関節と膝を曲げるべきです。このやり方でかがむと、背中がよりまっすぐなままに保たれ、肘を体の横につけたまま腕を下まで下ろせます。次に、ものを体の近くに持ったまま、脚を伸ばして持ち上げます。この方法では、背中ではなく脚で物を持ち上げています。頭より上に持ち上げたり、持ち上げている途中で体をひねったりすると、背中をけがするリスクが高くなります。

治療

具体的な原因が診断できる場合は、その病気を治療します。例えば、前立腺の感染症の治療には、抗菌薬が用いられます。ただし、ねんざや挫傷による筋骨格系の痛みや、他の多くの筋骨格系の原因に対しては、特別な治療法はありません。しかし、多くの一般的な対策が役に立ちます。通常、そのような一般的な対策は、脊髄神経根が圧迫されている場合にも用いられます。

一般的な対策

 

対策には以下のものがあります。

  • 行動の修正

  • 痛みを和らげる薬を飲む

  • 痛みのある部位を温めたり冷やしたりする

  • 運動をする

 

腰痛が起きた直後は、まず脊椎に負担をかけて痛みを引き起こす行動(重い物を持ち上げる、腰をかがめるなど)を避けることから治療を始めます。ベッドで安静にしても痛みの解消を早めることはなく、ほとんどの専門医は軽い運動を続けるように勧めています。ベッドでの安静は、激しい痛みを軽減するために必要な場合も、1日か2日にとどめるべきです。長期間ベッドで安静にしていると、コアマッスルの筋力が低下し、こわばりが強くなるため、腰痛が悪化し回復までの期間が長くなります。コルセットと牽引は役に立ちません。牽引を行うと回復を遅らせることがあります。

 

炎症がない限り、通常は、痛みを緩和するためにアセトアミノフェンが推奨されます。炎症がある場合は、市販薬や処方薬の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を使用すると、痛みを和らげ炎症を軽減することができます。アセトアミノフェンやNSAIDで十分な痛みの緩和が得られない場合、ときにオピオイド鎮痛薬が処方されますが、その場合、使用は短期間だけにするべきであり、長期間の使用は逆効果となることがあり、痛みに対する感度が高まってしまいます。

 

ときにカリソプロドール、シクロベンザプリン(cyclobenzaprine)、ジアゼパム、メタキサロン(metaxalone)、メトカルバモールなどの筋弛緩薬が、筋肉のけいれんを抑えるために使用されることがありますが、その有用性については意見が分かれています。これらの薬は、高齢者では副作用が起こりやすく、勧められません。目に見え触れることができる筋肉のけいれんがない限り、医師は筋弛緩薬を処方しないように努めています。処方された場合、筋弛緩薬の使用は72時間までにするべきです。

 

温めたり冷やしたりすることが役に立つことがあります( 痛みと炎症の治療)。けがをしてから最初の2日間は、通常は温めるよりも冷やす方が適しています。氷のうや冷却パックは、直接皮膚にあてないようにします。氷のうは、ビニール袋などに入れ、タオルや手ぬぐいの上からあてるべきです。20分したら氷のうを外し、そこから60~90分のうちに、再び患部に20分間あてます。けがをしたときから24時間はこの処置を何度か繰り返して行うことができます。温める場合は、温熱パッドを使い、同じ時間温めます。腰の皮膚があまり熱を感じ取れないことがあるため、熱傷(やけど)を予防するために、温熱パッドは注意深く使用しなければなりません。パッドを腰にあてたまま眠ってしまうリスクを避けるため、就寝時には温熱パッドを使わないようにします。

 

マッサージをすることで、筋肉のけいれんや挫傷、ねんざが原因の筋骨格系の痛みの解消が早まることがあります。はり治療に同様の効果があるという研究もありますが、ほとんどまたはまったく効果がないという研究もあります。カイロプラクターや一部の医師による脊椎徒手整復(脊椎マニピュレーション)も、筋肉のけいれんや挫傷、ねんざによる痛みの解消を早めることがあります。しかしながら、炎症性関節炎や椎間板ヘルニア( 椎間板ヘルニア)のある人には、さらなるけがのリスクが伴うことがあり、避けるべきです。

 

痛みが治まった後に、医師や理学療法士が推奨するような軽い運動を行うと、治癒や回復を早めることができます。一部の場合では、理学療法士による治療が役立ちます。通常、腰痛の慢性化や再発の予防に役立てるために、背筋の筋力強化やストレッチ、コアマッスル強化のための特定の運動が推奨されます。

 

その他の予防策(良い姿勢を保つ、硬さが中ぐらいのマットレスを使い適切に枕を使用する、正しい方法で物を持ち上げる)を続けるか、新たに始めるべきです。これらの方法によって、ほとんどの腰痛は数日から2週間で解消します。治療法にかかわらず、腰痛症状の80~90%は、6週間以内に解消します。

慢性の痛みの治療

 

慢性の腰痛に対しては、さらに対策が必要です。有酸素運動が役立つことがあり、必要であれば、減量するように助言されます。鎮痛薬が無効であれば、その他の治療法が考慮されます。

 

経皮的電気神経刺激法(TENS)を用いることがあります。TENSの装置は、低周波の電流を発生させて、患部に穏やかなチクチクする感覚を起こします。この電流は、脊髄から脳へと伝わる痛みの感覚の一部をブロックすることができます。患者の痛みの程度に応じて1日に数回、1回当たり20分から数時間、痛みのある場所にこの電流をあてることがあります。

椎間関節内への注射
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ときには、コルチコステロイド(デキサメタゾンまたはメチルプレドニゾロンなど)に局所麻酔薬(リドカインなど)を加えて、脊椎の椎間関節や、脊髄を覆っている組織の外層と脊椎との間にある硬膜外腔に、定期的に注射することもあります。硬膜外注射は、腰部脊柱管狭窄症よりも、椎間板ヘルニア( 椎間板ヘルニア)を原因とする坐骨神経痛( 坐骨神経痛とは)に対してより効果的なことがあります。しかし、長期的な便益が得られるかどうかは明らかではありません。通常、注射の効果があるのは数日から数週間だけです。その主な使用目的は、長期間痛みを緩和できる運動プログラムを開始できる程度にまで、痛みを軽減することです。

硬膜外コルチコステロイド注射
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腰痛に対する手術

 

椎間板ヘルニアにより、絶え間ないまたは慢性の坐骨神経痛、筋力低下、感覚消失、尿失禁、便失禁などが起きている場合は、手術で椎間板の除去(椎間板切除術)やときに椎骨の部分的な切除(椎弓切除術)を行わなければならないことがあります。通常、全身麻酔が必要です。入院期間は、米国では通常1日か2日です。しばしば、椎間板の飛び出した部分を取り除くために、脊髄くも膜下麻酔という局所麻酔の方法を用いて、小さく切開する顕微鏡手術が用いられます。通常、この手術のために入院する必要はありません。どちらかの手術の後、ほとんどの患者は6週間から3カ月で普段の活動をすべて再開できます。手術は手術を用いない治療よりも速く回復する傾向がありますが、約1年または2年後には、手術で治療された患者と手術を用いずに治療された患者の回復の程度は同じです。

椎間板切除術
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重症の脊柱管狭窄症の場合は、脊柱管を広げるために、1つの椎骨の大部分を手術で除去することがあります。通常は全身麻酔が必要です。入院期間は、米国では通常4日か5日です。患者がすべての活動を再開できるまでに3~4カ月かかります。患者の約3分の2は、順調にまたは完全に回復します。残りの患者の大部分でも、そのような手術によって、痛みが予防され、他の症状の悪化を防ぐことができる可能性があります。

 

重症の椎間板ヘルニア、脊椎すべり症や、脊柱管狭窄症に対する椎弓切除術などで脊椎が不安定になっている場合は、椎骨同士を固定する手術を行うことがあります。しかし、椎骨を固定すると動きが制限され、脊椎のほかの部分に余計な負担がかかり、さらなる問題が生じることがあります。

脊椎圧迫骨折

 

脊椎圧迫骨折は、50歳以上の女性で非常によくみられます。装具、痛み止め、場合によってはカルシトニンの鼻腔スプレーによる保存的治療が可能で、これは骨の治癒を助けるわけではありませんが、痛みを軽減することがあります。痛みが十分に抑えられない場合、以下2つの手術の選択肢があります。

  • 椎体形成術:セメントの混合物を骨折した骨に注入する

  • バルーン椎体形成術:骨折した骨にバルーンを挿入して空間を作り、その後バルーンをセメントで満たす