腰痛
実は、解明しきれていない「腰痛」。
まずは4つのタイプを把握
もはや「国民病」ともいえる腰痛ですが、実は、解明されていない部分もたくさんあるのです。そこでまずは、腰痛の全体像を大まかにつかむところから始めましょう。腰痛は、「ときに手術が必要で、原因を特定できる腰痛」と「手術が不要で、原因を特定しづらい腰痛」の2つに大別されます。そしてそれぞれの腰痛は、以下のように整理できます。
A:ときに手術が必要で、原因を特定できる腰痛
(全腰痛の15%)
腰椎圧迫骨折、脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、坐骨神経痛など
B:手術が不要で、原因を特定しづらい腰痛
(全腰痛の85%)
筋性腰痛、椎間板性腰痛、椎間関節性腰痛、仙腸関節性腰痛など
一般的に腰痛というときは、手術が不要な後者を指します。そこで今回は、この4つのタイプについて解説しましょう。なお、この記事では便宜上、それぞれの腰痛について、表に記したような呼び名を使いますね。
かがむと痛い? 反ると痛い? あなたの痛みを判別しよう
ではこれから4つの腰痛の特徴を見ていきますが、いずれも共通するのは、加齢とともに腰まわりの筋肉や関節が衰え、こわばって柔軟性が失われることが原因だと考えられています。そんな脆さを抱えた状態のところへ、無理な動きが加わることで発症します。
筋性腰痛(10%)
筋性腰痛は、筋肉の使いすぎによって起きるいわば「筋肉痛」で、酷使した場所に炎症が起きた状態です。運送業など肉体労働が多い人、また、同じ姿勢を続けるデスクワークの人にも多く見られます。
痛い場所をピンポイントで特定できるのが特徴で、そこをほぐしてあげると軽快します。
前屈腰痛(40%)
前屈腰痛は、背骨の椎骨と椎骨の間にある「椎間板」に問題があり、物を拾うなど前かがみになったときに、椎間板が圧迫されて痛みが出ます。背筋が弱い人に起きやすく、猫背や前かがみになりがちなデスクワークの人にも多いようです。
この腰痛は、揉みほぐしても良くならないのが特徴です。
のけぞり腰痛(40%)
のけぞり腰痛は、電車のつり革を持つ、洗濯物を干す、赤ちゃんを抱っこするなど反り気味の姿勢を取ったときに、背骨の後ろ側にある椎間関節がぶつかることで痛みが生じます。腹筋が弱いために反り腰になっている人に起きやすく、女性に多く見られます。
この腰痛も、揉みほぐしても改善しません。
お尻腰痛(10%)
お尻腰痛は、厳密に言うと腰ではなく、お尻近くにある仙骨のつけ根の歪みや炎症が原因で起こります。産後の女性に圧倒的に多い腰痛です。妊娠中に分泌されるホルモンの作用で緩んだ仙腸関節の靭帯が、出産後に正常に戻らないことで起きるケースが多いようです。
さて、あなたの腰痛はどれに当てはまりましたか? 次のブロックでは、特に悩む人が多い「前屈腰痛」と「のけぞり腰痛」について、おすすめの対処法をご紹介します。
間違った筋トレは逆効果! 正しいやり方を身につけて
まず最初に、腰痛回復の鉄則は2つあることを覚えておきましょう。その2つとは、「①筋肉をほぐして柔軟性を増すためのストレッチ」と「②筋肉を鍛えて強くするための筋トレ」です。これを両輪で行えば、慢性化した腰痛にも回復の見込みが見えてきます。
どちらとも、2~3種類の運動を20秒ずつでいいので、「毎日」続けることが大切です。私が日ごろ、腰痛の方にお伝えしている運動をまとめました。まずは、すべての腰痛におすすめのストレッチです。
太ももの前面を伸ばすストレッチ
- 立った状態で、かかとをお尻に近づけるようにして膝を曲げましょう。
- お腹に力を入れたまま、膝を後ろに引きながら、足のつけ根を前に突き出しましょう。
- そのまま20秒間キープ。もう片方の足も同様に。
太ももの背面を伸ばすストレッチ
- あお向けに寝た状態で、太ももの裏を持って膝をお腹に近づけましょう。
- 限界まで来たら、膝をできる限りまっすぐ伸ばしましょう。
- そのまま20 秒間キープ。もう片方の足も同様に。
なぜ腰痛なのに太もものストレッチを行うのでしょう?太ももの裏側には、ハムストリングスという筋肉があります。この筋肉が硬い人は、前に傾くとき、背骨をより曲げなければかがむことができません。このような人は背骨に大きな負担がかかりやすく、それが腰痛の原因となります。そのため、太ももの周りの筋肉を柔らかくすることは腰痛の予防にもなるのです。
次に行う筋トレは、腰痛タイプによって動きが異なります。ここでは、「前屈腰痛」と「のけぞり腰痛」におすすめの筋トレを1つずつご紹介します。
[前屈腰痛]背筋を鍛える筋トレ
- あお向けになって膝を曲げ、両手は体の横に伸ばします。
- 首から膝まで一直線になるまで、お尻を持ち上げましょう。
- そのまま20 秒間キープ。
[のけぞり腰痛]腹筋を鍛える筋トレ
- 膝を立てた状態であお向きになり、息をゆっくり深く吸いながら、お腹を膨らませましょう。
- お腹が膨らみ切ったら、今度は息をゆっくり吐きながら、お腹を凹ませましょう。
- これを5~10回繰り返します。立ったり座ったりしても行えるので、気がついたときに実践しましょう。
筋トレで気をつけたいのが、痛みが出ない範囲で行うこと。また患者さんを見ていると、腹筋運動のつもりが背筋を使っているなど、間違ったやり方をしている人もいます。そうすると、休めなければいけない筋肉を酷使することになり、症状が悪化しかねません。「なにかおかしいぞ」と感じたら、自己流で判断せずに専門家を訪ねることも検討してください。
あるある! 腰痛にまつわるこんな悩み
最後に、患者さんからよく寄せられる質問をご紹介します。
この痛みはいつまで続くの?
回復までの期間は個人差がありますが、適切な運動と正しい姿勢を心がければ必ず良くなります。どんな動きをしたときにどこが痛むのかをセルフチェックして、自分の腰痛タイプに合った運動を行いましょう。それでも改善しない場合は、他の疾患の可能性もあるので、医療機関を受診してください。
痛いときにやってはいけないことは?
どの腰痛も、痛くなる方向に動かさないことがポイントです。筋性腰痛は、テニスボールや握りこぶしなどを使うと痛む箇所を上手にほぐせますよ。お尻腰痛は、重い荷物を持たないように気をつけて。
「どうせ一生のつき合いだから…」「歳だからしょうがない」とあきらめがちな腰痛も、姿勢の改善や運動を習慣化することで、回復する可能性大です。腰痛のない晴れやかな生活を目指して、まずは1日20秒の運動からチャレンジしてみましょう!