ランナー膝とランニング中に起きやすい疾患
ランナー膝(腸脛靱帯炎)ほか、ランニングで起きやすい膝の疾患と原因
ランニングをしていて膝が痛くなったことはありませんか。膝の痛みはバスケやサッカー、野球など、さまざまなスポーツに共通するケガの代表格ですが、ランニングを習慣化している人も膝にダメージを受けやすい傾向にあります。代表格として知られるのは腸脛靱帯炎(ちょうけいじんたいえん)。いわゆるランナー膝です。その他にも、ランナーと関わりの深い疾患はいくつか存在します。ここでは、ランナー膝をはじめ、ランニングで起きやすい膝の内側と外側の痛みの原因とメカニズムをご紹介します。
膝関節のしくみ
膝関節は、太ももに付いた大腿骨(だいたいこつ)と足のすねの「向こうずね」といわれている部分にある脛骨(けいこつ)、腓骨を支える腓骨(ひこつ)、いわゆる「おさら」と呼ばれている膝蓋骨(しつがいこつ)が組み合わさってできています。
これらの骨は膝の曲げ伸ばしをする際に、体重を支える重要な役割を担っているのにもかかわらず、接合が浅く、ぴったりくっついていません。そのため、安定した動きができるように半月板や靭帯(じんたい)で補っています。
ランニングなどのスポーツで同じ動作を繰り返すと、膝周辺にある靭帯や腱を過剰に使用することになり、炎症を起こして痛みなどの症状につながります。
膝の痛みの代表格・ランナー膝とは?
ランニングにより発生しやすい、痛みの代表格がランナー膝(腸脛靱帯炎)です。陸上競技のランナーに多くみられ、足を酷使した際に膝の外側にズキズキとした痛みを感じるのが特徴です。特にランニングにおいては、着地時に体重の5倍ほどの負荷がかかる下り坂を走るときに痛みが増します。
初期の段階では、ランニング中に痛みが出るものの、しばらく休むと治まる程度ですが、次第に運動後も痛みを感じるようになり、悪化すると慢性化して日常生活にも支障をきたすので注意が必要です。長距離の陸上競技以外にも、サイクリングやスキー、登山、バスケットボールなどでも発生します。ランニングを始めたばかりの人や筋力が弱い人、筋肉が硬くなっている人、O脚で体重が外側にかかりやすい人がなりやすいといわれています。
ランナー膝になる原因とメカニズム
腸脛靱帯は太ももの外側にある大きな靭帯です。膝の曲げ伸ばしをするたびに、大腿骨の外側にある骨の出っ張り・大腿骨外側上顆(だいたいこつがいそくじょうか)の上を前後に動きます。ランニングなどで膝の屈伸を繰り返すことにより、腸脛靱帯と大腿骨外側上顆が擦れ合い、摩擦が起こることで炎症が起こります。その結果、ランニング時やランニング後に疼痛(とうつう)が生じるのです。
ランナー膝が起こる原因として、オーバーユース(使いすぎ)のほか、柔軟性の低下や筋力の低下、ウォームアップ不足などが考えられます。また、硬い地面や下り坂の走行、硬いシューズとの関連性も指摘されています。
膝の痛みの原因となるその他の疾患
ランナー膝のほかにも、ランナーに起こりやすい膝の疾患をいくつか紹介します。疾患により、痛む場所は①膝の外側、②膝の内側、③膝の下側と異なります。
鵞足炎(がそくえん)
鵞足とは、太ももの内側から膝内側にかけて伸びている3つの筋肉の総称です。鵞鳥(がちょう)の足のように見えることから名付けられました。膝の曲げ伸ばしを過度に行うことにより炎症が起きて、膝の内側にズキズキとした痛みを感じます。
膝蓋靭帯炎(しつがいじんたいえん)
太ももの外側を広くおおっている膝蓋靭帯と、太ももにある大腿骨がこすれて炎症を起こしたものです。ランニングやジャンプを長時間繰り返すことで発生するため、ジャンパー膝とも呼ばれています。症状として、膝の下側にうずくような痛みを感じます。
変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)
膝関節の軟骨がすり減り、関節が変形することで、膝の内側や外側に炎症や痛みを生じる疾患です。O脚が多い日本人の場合、内側の軟骨が減りやすいため、内側型の変形性膝関節症がほとんどです。
初期の段階では、起床時にこわばりや鈍痛を感じる程度ですが、進行すると階段の上り下りや正座が困難になり、日常生活にも支障をきたします。原因として、加齢による筋力の衰えや肥満のほか、過度に関節を使う運動による軟骨の摩耗などが考えられます。
ランニングで膝が痛くなったら
ランニング中やランニング後に症状が出たら、まず安静を保って、アイシングで患部の炎症を抑えましょう。運動を再開するときは、しっかりとウォーミングアップし、筋肉を柔軟にしてから行いましょう。膝に負担をかける下り坂のランニングは避けて、芝生や土などの柔らかい地面やフラットなコースを選んで走るのもひとつの手です。
これらの疾患は膝の使いすぎなどによって生じます。いったん痛みが治まったとしても、原因がなくならなければ、症状を繰り返してしまいます。ストレッチや筋トレをとりいれて、柔軟性の向上や筋力アップを図りましょう。